専門医のコラム

脂肪肝についてお話します

専門医が人間ドックでよく脂肪肝といわれるのですが、脂肪肝についてお話します。

脂肪肝とはどのような状態ですか?
脂肪肝は、肝臓の細胞に脂肪が蓄積する状態を指します。これは、飲酒や食生活の乱れなどが原因で起こります。脂肪肝自体は無症状であることが多いですが、放置すると肝硬変や肝臓がんに進行する可能性があります。

脂肪肝の原因をもう少し詳しく教えてください。
脂肪肝の主な原因は大きく分けて2つあります。
1. 過度な飲酒: アルコールは肝臓で分解されますが、過度な摂取は肝臓に負担をかけ、脂肪が蓄積します。
2. 不健康な食生活: 高カロリーな食事や運動不足も脂肪肝の原因となります。

脂肪肝を予防するのはどのようにしたらよいですか?
脂肪肝を予防するためには、以下の生活習慣の改善が有効です。
1. 適度な運動: 定期的な運動は体内の脂質代謝を促進し、脂肪の蓄積を防ぎます。
2. バランスの良い食事: 高カロリーな食事を控え、バランスの良い食事を心掛けましょう。
3. アルコールの摂取量を控える: 適度なアルコール摂取も重要です。

脂肪肝の自覚症状はありますか?
脂肪肝は初期段階では無症状であることが多いため、定期的な健康診断で早期発見し、生活習慣の改善に努めることが大切です。健康的な生活習慣を心掛け、早期発見・早期治療で、健康的な生活を送りましょう。

脂肪肝の診断にはどのような方法がありますか?
1.血液検査: 脂肪肝では、肝臓の酵素であるAST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなどの数値に異常が出ることがあります。これらは健康診断などで行われる一般的な血液検査にも含まれることが多いです。
2.超音波エコー検査:肝臓と腎臓のコントラストを検査することにより、簡単に脂肪肝の有無がわかりますが、程度まではわかりません。
3.CTスキャン: 肝臓の形状や大きさ、内部の状態を調べることができます。
全体的に肝臓をみることができること、他の疾患の存在も同時にわかるに有用性があります。
4.肝生検: 針を使って肝臓の一部を採取し、肝臓の組織を顕微鏡で観察する検査です。これにより、脂肪肝の程度や炎症の有無などを詳しく調べることができます。

脂肪肝の診断といっても、いろいろ種類があることを理解できました。健診や人間ドックで行われるのは超音波検査が多いと聞きます。人間ドックなどの超音波検査について少し詳しく教えてください。
健診・人間ドックで行われる超音波検査は体の中の異常を検出し、必要があれば医療機関に受診して頂く目的として行われています。脂肪肝では、肝臓のエコー(反射した超音波)が通常よりも明るくなります。肝臓と腎臓のコントラスト(肝臓が腎臓に比べてより明るく映る)がはっきりすることにより、脂肪肝と診断できます。人間ドックで脂肪肝を指摘された場合、より詳しくその原因や程度を評価する必要があるため、医療機関に受診する必要があります。

人間ドックで脂肪肝を指摘され、医療機関を受診した場合、まずどのような検査が行われるのですか?
医療機関に受診された場合、問診表に情報を書いて頂いた後に医師の診察を受けます。その場合、過去の病気や現在どのような病気にかかっているのかを詳しくきかれます。また、食事や運動の習慣や体重の変化など、診断に必要な様々な情報の聞き取りがおこなわれます。(問診といいます)そのあと、身体の診察が行われた後、血液検査や超音波検査が行われます。超音波検査は体に害がなく、とても便利な検査です。まずはこれらを合わせて、次にどのようにするかを判断します。

先ほど超音波検査を医療機関でもおこなうと教えて頂きましたが、人間ドックでおこなう超音波検査と医療機関でおこなう超音波検査とどこが違うのですか? AIクリニックでの特徴を教えてください。
脂肪肝の超音波検査ではATT(Attenuation measurement)検査が注目され、肝臓に蓄積した脂肪の程度を定量的に評価することができます。ATT検査は、非侵襲的かつ簡便な方法で脂肪肝の診断を可能にします。ATT検査をおこなうことができる超音波機器はかなりハイスペックであり、どこでも検査できるものではありません。当院ではATTに比べてより精度の高いiATTを使用しています。多施設臨床研究では、iATTの結果はMRI-PDFF(MRIによるプロトン密度脂肪分率)の検出結果と互換性があることが確認されました。
AIクリニックでは、脂肪肝の患者さんにおいてiATTの測定をおこない脂肪肝の程度を定量的かつ経時的に比較することが可能となっています。

最近、お酒を飲まなくても脂肪肝になることを聞いたのですが、これはどういうことですか?
アルコールを飲まない、飲んでも肝障害をきたさないとされるアルコール20g未満/日(日本酒換算1合未満/日)で、脂肪肝を認め、他の肝疾患を除外した病態を非アルコール性脂肪性肝疾患といいます。この多くは、肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧などを基盤に発症し、2つの種類があります。
その一つは、肝臓に単に脂肪がたまっている状態で、病態が進行しない非アルコール性脂肪肝(NAFLD:ナッフル)です。もう一つは、脂肪肝に炎症が起こる非アルコール性脂肪肝炎(NASH:ナッシュ)といわれるものです。炎症が慢性的に続き、肝臓の組織が線維化し、NASHの1~2割が肝硬変へと進み、更にその一部は肝がんに進行するといわれています。このNASHは、ウイルス性肝炎に次いで肝がんの原因となっているため、特に注意が必要です。
そのため、脂肪肝の患者さんでは、脂肪肝の程度を定量的に測定することに加え、肝臓の線維化の度合いも調べる必要があります。AIクリニックでは、肝臓の線維化の程度も詳しく調べる超音波装置を装備して実際の患者様の検査をおこなっております。加えて、脂肪肝の専門医が診療しており、安心につながりますね。

脂肪肝の治療法にはどのようなものがありますか?

1.ライフスタイルの変更:体重を減らす、コレステロールとトリグリセリドを下げる、糖尿病を制御し、アルコールを避ける。
2.運動療法:1日30分以上で週5日、または1日60分以上で週3日の有酸素運動を継続して行うことが推奨されています。
3.食事療法:食事量を従来の8割程度に減らし、脂質と糖質を控え、食物繊維豊富な野菜類や海藻類を多く摂るようにすることが推奨されています。
4.薬物治療:生活習慣の改善だけで十分な効果が得られない場合は、抗酸化作用のあるビタミンEや糖尿病薬による投薬治療が行われることもあります。
以上、脂肪肝についてのトピックでした。以上のことを踏まえて、脂肪肝を指摘されたら、当院の専門医にご相談ください。

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